【元美容師が解説】美容師さんが使うハサミって何が違うの？プロ用シザーの秘密を徹底解説

美容室に行くと、美容師さんが手際よくハサミを操りながらカットしてくれますよね。
その姿に「自分のハサミと何が違うんだろう？」「あんなに高そうなのはなぜ？」と思ったことはありませんか？

実は、美容師が使うハサミ（シザー）は、一般的なハサミとは構造も素材も、目的もまったく違うのです。

この記事では、プロの美容師が使う“シザーの世界”をわかりやすく解説します。
道具を知ると、美容師の技術の奥深さがより見えてくるはずです。

1. 美容師用ハサミは「髪を切るためだけに作られた専門道具」

まず前提として、美容師用のハサミ（プロシザー）は、文房具のハサミや家庭用のヘアカット用ハサミとは根本的に違います。

最大の目的は、

「髪を傷めず、美しく切ること」

髪の毛は非常に繊細で、わずかな切り口の乱れでも枝毛やパサつきの原因になります。
そのため、美容師用ハサミは精密さと切れ味、耐久性を極限まで追求して作られています。

つまり、美容師のシザーは「職人が髪を傷つけずに切るための精密機械」と言っても過言ではありません。

美容師は、1丁のハサミだけでカットしているわけではありません。
目的や技術に応じて、いくつかの種類を使い分けています。

最も基本的なハサミ。
髪の長さを整えたり、形を作るために使用されます。

カットシザーは「美容師の命」とも呼ばれるほど重要な道具。
その切れ味がスタイルの正確さを左右します。

髪の量を減らしたり、質感を調整するために使うハサミです。
片方の刃にクシ状の溝があり、一定の割合で髪を“間引く”構造になっています。

最近では「ダメージを出さない」「引っかからない」ための滑らかな溝構造の高級モデルも増えています。

乾いた髪やスタイリング後の髪を“なでるように”カットするためのシザー。
刃が滑らかに髪を逃がすように設計されています。

このシザーの登場によって、ナチュラルで動きのあるスタイルづくりが格段に進化しました。

髪の量を減らすというよりも、ラインをなじませたり境目をぼかすためのハサミ。
「毛量を減らさずに質感だけ整える」ため、デザインの仕上げに使われます。

美容師によっては“ブレンダー”や“トリミングシザー”と呼ぶこともあります。

美容師用シザーの多くは、ステンレス鋼やコバルト合金、ハイカーボン鋼などの高硬度金属で作られています。

一般的な家庭用ハサミがHRC（硬度）50前後なのに対し、
プロシザーはHRC58〜62と非常に硬く、耐摩耗性に優れています。

素材によって、
「切れ味の鋭さ」「持続性」「重さ」「音」「感触」まで異なります。

美容師はこれらを自分のカットスタイルや手の感覚に合わせて選びます。